SAP Basisとは!? 入門者向けにシステム概要や業務内容を解説

SAPに詳しいという方でもSAP Basisの機能や役割ついてきちんと把握しているという方は多くありません。
なぜなら、SAP Basisはシステムの基盤を支える黒子の役割を担っており、そのほとんどがベールに包まれているからです。

本記事では、SAP Basisとは何なのか、SAP Basis担当者が具体的にどんな業務を行っているのか詳しく解説していきます。

目次

SAP Basisとは

SAP BasisとはSAP社のERP製品(*)を稼働させるためのミドルウェアコンポーネントです。
* 古くはSAP R/3と呼ばれ、現在では2015年2月に販売開始されたSAP S/4 HANAとなります。

SAP Basisは現在ではSAP NetWeaverという名前に変わっていますが、昔の名残でSAPプロジェクトの現場ではBasisという言葉で日常的に使われています。

SAP BasisはSAP独自のプログラミング言語であるABAPだけでなくJavaのプラットフォームを提供します。
SAP BasisがOSやデータベースの違いを吸収する役割を担うことで、SAP社のERP製品を様々なOSやデータベース上で稼働させることを可能にしています。

SAP NetWeaver 7.5の特徴

SAP NetWeaver 7.5はSAP S/4 HANA 1709まで利用されているミドルウェアで、SAP enhancement package 8 for SAP ERP 6.0にも利用されているため、OracleやMicrosoft SQL ServerなどのSAP HANA以外のデータベースでもサポートされています。
また、インメモリデータベースであるSAP HANAの性能を引き出すためにOpenSQLの拡張やSAP Fioriの開発を容易とするための拡張が実装されています。

SAP NetWeaver 7.5(7.03、7.31、7.4を含む)はSAP ERP 6.0のメンテナンス方針更新に伴い、メインストリーム保守が2027年末まで、延長保守が2030年末までと発表されました。

ただし、使用している製品毎に保守期限が異なるため、SAP Basis担当はSAP NetWeaverだけでなく、SAP HANAやSAPカーネルの保守期限をきちんと把握しておくことが必要となります。
SAP NetWeaverは2030年まで使い続けられると油断していると、基盤となるSAP HANAやSAPカーネルの保守期限が切れ、セキュリティリスクに晒された状態となります。
* SAP NetWeaver 7.31や7.4はABAPスタックのみ2027年末までのサポートとなります。
* Javaスタックを使用し続けるためにはSAP NetWeaver 7.5へのアップグレードが必要となります。

なお、SAP S/4 HANA 1809からはSAP BasisはABAP Platformという名称に変更になりました。
今後はSAP S/4 HANAの一部として提供されるようになり、ABAP Platform単独では提供されないようになっています。

SAP Basisの運用業務

SAP Basisはミドルウェアということもあり、下位のインフラ領域から上位のアプリケーション領域まで幅広い知識と経験が必要となります。
そのため、SAPシステムを安定稼働させるためには、質の高いSAP Basis担当者がアサインされているかどうかに左右されるといっても過言ではありません。

ここからはSAP Basis担当者が実施する主な運用業務についてご紹介します。

システム稼働管理

SAP Basis担当者が日常的に実施する主なシステム稼働管理業務について記載します。

①稼働監視
SAPアプリケーションにはシステムを安定稼働させ、リソースを有効活用するために多くのコンポーネントが動作しているため、各コンポーネントが正常に動作しているか常に監視します。

②パフォーマンス監視
SAPが用意しているパフォーマンス分析ツールだけでなく、OS・データベースの分析ツールを利用してパフォーマンス状況を監視し、システム全体に影響が出るようなボトルネックが発生していないかどうか監視します。

③リソース監視
SAPアプリケーションのリソース使用状況(主にワークプロセスやJavaサーバプロセス)やインフラ資源(CPU・メモリやストレージなど)が最適に利用されているかどうかを監視します。

④各種チューニング
上記のような各種監視状況からアプリケーションレイヤーおよびインフラレイヤーでパラメータの最適化やインフラ資源の増強を実施します。

システム運用管理

SAP Basis担当者が日常的に実施する主なシステム運用管理業務について記載します。

①バックアップ運用
RPO(目標復旧時点)やRTO(目標復旧時間)を考慮したバックアップ設計や運用を実施します。
さらに災害復旧(DR)の検討なども必要となります。

②ユーザー管理
ADやサードパーティ製品とのユーザー連携の設計・運用やユーザーによる不正な利用がないかの監査対応などを実施します。

③SAPシステム管理
不具合対応のためのSAPノート適用やSAP標準プログラムの修正(モディフィケーション)の管理を実施します。

④定常業務報告
事前に合意したSLAに従い、運用作業の実績、および今後の保守予定を週次や月次で報告します。

⑤アップグレード/マイグレーション
各コンポーネントの保守切れ対応や新規機能拡張のためなどにアップグレードやマイグレーションを実施します。SAPカーネルのアップグレードなどの小さなものからSAPシステム全体のアップグレードなど規模は様々です。

システム障害管理

SAP Basis担当者が日常的に実施する主なシステム障害管理業務について記載します。
SAPシステムは企業内システムの中核であり、そこにシステム障害が発生すると非常に影響が大きくなるため、迅速な障害復旧が求められます。

①障害調査
インフラ担当やアプリ担当と連携し、障害発生個所を特定します。
また、他に影響が発生している箇所がないかどうか調査します。

②障害復旧対応
障害調査結果に基づき、障害の復旧対応を実施します。
パフォーマンス障害の場合、どこがボトルネックになっているのか特定・改修するには幅広い知識が求められますので、SAP Basisの役割は重要となります。

③予防保守対応
問題管理プロセスを定義し、今後の障害発生時の迅速な対応につなげたり、障害発生件数の抑制につながるような対応を実施します。

システム変更管理

SAP Basis担当者が日常的に実施する主なシステム変更管理業務について記載します。
システムを運用していくうえで既存のバグ対応、新規機能の追加などシステムを変更することは必ず発生します。
事前にシステム変更管理プロセスを定義しておくことは非常に重要となります。

①変更管理の定義
変更のアセスメントから実装までの仕組みを定義します。

②設定変更
各種パラメータの変更箇所、変更理由を管理します。

③更新プログラムの適用
OS、データベースなどにセキュリティパッチの適用やバージョンアップを実施します。
複数のシステムが存在する場合はシステムごとの適用状況を管理します。

④モディフィケーション管理
システム運用管理で記載したSAPノートやモディフィケーションの実装履歴を管理し、アップグレードやマイグレーション時の影響範囲調査などに利用します。

SAP Basis運用はアウトソーシングできる!?

以上から、SAP Basisの運用業務には次のような高いスキルが求められます。

  • ハードウェア(サーバ/ストレージ)、ミドルウェア(OS/データベース)、ネットワークといったITインフラの知識
  • SAPシステム構成を把握し、アプリ領域とインフラ領域の間の境界線(グレーゾーン)の対応ができる技術
  • 障害発生時に問題個所の特定から解決までを迅速に対応できる経験

この知識・技術・経験を兼ね備えたスキルを持った専門家を自社内で一から育成するには時間もコストもかかります
また、幅広い経験やトレンドを取り込むといった点でも外部業者に委託するメリットがあります。

アウトソーシングする際は委託する業務内容が企画・要件定義のような企業内のいわゆる「コア業務」なのか、システムの保守・運用といった「ノンコア業務」なのかといった点を判断し、適切なアウトソース先を選定する必要があります。

クラウド移行増加でSAP Basisの需要増加

現在、多くの企業が採用しているSAP ERP 6.0は前述したようにメインストリーム保守は2027年末までとなります。
そのため、SAP導入企業は何らかの対応が必要となります。
選択肢として、「SAP S/4 HANAへの移行」、「他社のERPへの移行」、「既存SAP ERPの継続」の3つが考えられます。

①SAP S/4 HANAへの移行
SAPの最新ソリューションを取り入れることでDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現することができます。
S/4 HANAになることでテーブル構造が変更となり、アドオンプログラムの改修が必要になるため、アドオン本数などによっては改修規模が大きくなる可能性があります。

②他社のERPへの移行
SAPのパッケージで定義された業務に縛られず自社の業務を再構築することができる反面、SAPと連携していた多くの既存システムを含めて一から再構築する必要があるため、新システムの構築に多くの時間とコストがかかります。

③既存SAP ERPの継続
業務影響なく移行に伴うコストがかからないというメリットがある一方、SAPの正式な保守が受けられなくなります。
*リミニストリートなどの第三者保守を利用して、一時的に2027年末という期限に縛られなくすることも可能です。

これらを契機にオンプレミスからクラウドの移行が加速し、クラウドへの移行の需要が拡大しています。
SaaS型、IaaS型のいずれにしても、その他のシステムとの連携をどのように実現するのか、システム移行に伴う各テストに必要となる環境をどのように準備するのか、SAP Basisの役割は非常に重要なものとなります。

最適なパートナーに運用委託を検討しましょう

新規にSAPシステム導入を検討している企業だけでなく、既存のSAPシステム導入企業においても、最新のテクノロジーを取り入れつつ、現行業務への影響を最小限に抑えるような最適なソリューションを構築・運用・保守していくためには、豊富なSAP知識を有したパートナー企業の選定は最重要項目となっています。

特にSAP BasisはSAPシステム特有のミドルウェア領域を中心に幅広い知識と技術力が必要となるため、豊富な知識をもった専門家がいるかどうかでシステムの安定運用に大きく影響してきますので、弊社のサービスをご検討ください。

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