SAP BTP(SAP Business Technology Platform)とは!? 概要と活用事例を解説!

SAP Business Technology Platform(以下、SAP BTP)とは、SAP社が提供しているクラウド型アプリケーション開発のプラットフォームです。
SAP BTPを活用することで、SAPアプリケーションの開発・拡張が柔軟に行えるほか、ほかのクラウド製品とのデータ連携を実現できるため、DXの実現に貢献します。
今回は、SAP BTPの概要(製品領域・開発経緯・役割)をはじめ、SAP社とGoogle Cloudの提携やSAP BTPの活用例についてご紹介します。

目次

SAP BTP(SAP Business Technology Platform)とは

SAP BTPとは、SAP社が提供しているアプリケーション開発のプラットフォーム(PaaS)です。
データ管理や分析、その他のSaaS製品との統合機能などが備わっており、柔軟にアプリケーションを拡張・構築できることが特徴です。

現在、企業においてさまざまな業務や管理システムにSaaS製品が導入されていますが、DXを推進するためには、全社横断的なシステム連携やデータ活用が欠かせません。
SAP BTPを活用することで、CRMをはじめとするSaaS製品との機能連携や機能拡張が可能となり、時代やニーズとともに目まぐるしく変わるビジネス環境にスピーディに対応できるようになります。

また、SAP BTP内のフレームワークや拡張機能を活用することで、SAP ERPとの親和性の高いアプリケーションを効率的に開発することが可能です。
SAP Cloud以外にも、AWS・Azure・Google Cloudなどのクラウド上でも動作するため、ユーザー側の障壁がなくシームレスな活用を実現できます。

SAP BTPの製品領域

SAP BTPは、データ管理・分析・開発・機械学習 といった4つの領域に大別されます。
それぞれの内容について解説します。

Database and Data Management

Database and Data Managementとは、データを蓄積して管理する領域です。
具体的には以下が挙げられます。

  • SAP BW/4HANA
    SAP Business Warehouseの後継製品であり、2016年にリリース。
    データ処理基盤として同社のインメモリーデータベース「SAP HANA」を採用しており、従来のデータウェアハウスと比べて大幅に処理速度が向上していることが特徴です。
  • SAP Data Warehouse Cloud
    SaaS型データウェアハウスアプリケーションで、SAP HANA Cloudを基盤としており、あらゆるデータウェアハウスで利用できます。
    データ統合、データベース、データウェアハウスのあらゆる機能を提供し、SAP Analytics CloudやSAP BW Bridgeを活用することでSAP S/4HANAと連携することができます。

SAP S/4HANAでは、高速化された処理によってデータの直接的な参照が可能になり、データウェアハウスを経由しないデータ分析のケースも増えてきました。
しかし、以下の用途においては、データウェアハウスが活躍します。

  • 過去数年にわたる膨大なデータを参照・分析する
  • S/4HANA以外のデータを含めて分析する

Analytics

Analyticsとは、Business Intelligenceと呼ばれ、データを分析して可視化する領域です。
前述のデータ領域で管理されたデータを基に分析を実施して可視化することで、経験や勘に依存せず、客観的なデータに基づいた意思決定を行えるようになります。

SAP BTPにおけるAnalyticsの製品として、以下があります。

  • SAP Analytics Cloud(SAC)
    データ可視化の領域だけでなく、計画性領域の機能も付帯
  • SAP Business Planning and Consolidation(SAP BPC)
    事業計画・予算編成に特化しており、分析領域も付帯

Application Development and Integration

Application Development and Integrationとは、JAVAをベースとしたアプリケーション開発を実施する領域です。
SAP BTPでは、事前構築済みのテンプレートを利用 できるため、SAP技術者不足に対応できるほか、アプリケーション開発の効率化に貢献します。

SAP BTPにおけるApplication Development and Integrationの製品は、以下の2つです。

  • SAP Extension Suite
    ローコードもしくはノーコードでの開発によって、開発工数は削減され迅速な運用ができる
  • SAP Integration Suite
    サードパーティソリューションを統合し、事前構築済みのパッケージで開発を効率化する

Intelligent Technologies

Intelligent Technologiesは、SAP BTP内でのAIによる機械学習がメインとなります。
膨大なデータを活用した機械学習によって、業務プロセスの最適化・データに基づいた意思決定を実現できます。

SAP BTPにおけるIntelligent Technologiesの製品として、以下が挙げられます。

  • SAP Intelligent Robotic Process Automation
    IoTソリューションの業務自動化サービス
  • SAP Conversational AI
    チャットボットエンジン

SAP BTPに至る経緯

SAP BTPは、10年以上かけて現在のサービスへ移り変わっています。
ここでは、サービスの変遷をまとめました。

  • 2010年頃:SAP BTPの前身となるSAP HANAが提供開始
  • 2010年代半ば:クラウドを取り入れたSAP HANA Cloud Platform(HCP)の提供が開始
  • 2017年:SAP HANA内にとどまらずPaaSを提供していることを明確にするため、SAP Cloud Platform(SCP)へと改称
  • 2021年:ビジネス全体へシステムの支援を拡大するため、SAP Business Technology Platform(SAP BTP)へと改称     SCPは、BTPの一部として分類されます。

SAP BTPの役割

SAP BTPの役割は、SAP社で提供するシステムの導入効果を最大化することです。
最大化を実現する具体策は、以下の4つです。

  1. SAPアプリケーションの拡張とアプリ開発
    拡張機能の開発や、カスタマイズによって生産性が向上します。
  2. サプライチェーンとECの統合
    サードパーティのCRMと連携できます。
  3. アプリケーションのデータアナリティクス、プランニング
    他社ソリューションも含めたデータの分析が可能です。
  4. 事前構築済みテンプレートコンテンツの提供
    コーディングをほとんど用いずにシステムを活用できます。

Google CloudとSAPが提携

Google CloudとSAPは、以下のような目的で提携されています。

  • 基幹システムのクラウドへの移行
  • ビジネス変革の推進
  • Google CloudのAI機能による既存の業務システムの支援

この提携によって、Google Cloudは『RISE with SAP』のクラウドパートナーとなりました。
現在では、SAP BTPに含まれるさまざまなアプリケーションを、Google Cloudのクラウドインフラストラクチャーやネットワークを通じて利用できます。

GoogleCloudとSAPの提携により実現した機能

SAP BTPがGoogle Cloud上で利用可能になって以降、ユーザーは多くのことが実現できるようになりました。
たとえば、データベースでは、データ管理・分析・インテグレーション・拡張が可能になりました。
その他、クラウド・ハイブリッド両方の環境で動作できるようになったことも、Google Cloudとの連携によるものです。

SAP BTPの活用事例

SAP BTPサービスの活用例を以下でご紹介します。

PDFの請求書を自動登録(Intelligent RPA)

SAP BTP内のIntelligent RPAというアプリケーションを活用すれば、PDFの請求書を自動で登録することが可能です。
たとえば、メールに添付された請求書データが、共有フォルダに格納されます。
そして、AI OCRによって自動的にデータが判別され、必要な項目を自社のシステムに登録します。
大量の請求書を手動で処理することは、時間と人的コストがかかりますが、SAP BTPを活用すれば、エラーの発生・人的コストを抑えて生産性を向上できます。

チャットボットを使ったデータの照会(SAP Conversational AI)

社内の営業担当者やクライアントから、請求書や伝票のデータ照会を依頼された際、SAP Conversational AIを活用すれば、データの確認をスムーズに行えます。
日々の請求書や伝票の照会作業を半自動化できるほか、複数システムへのアクセスや、照会番号の検索・入力の作業を自動化することで、業務をより一層効率化できます。

不具合の予測と対応の自動化(IoT Service)

IoTから収集したデータをAIが分析して、故障・不具合に関して自動で検知・予測することも可能です。
たとえば、製造現場に設置したセンサーデータをIoT Serviceで受信して、データベースに格納します。
その後、機械学習したアルゴリズムによって、故障と関わりがある要因を分析します。
このように、IoTとAIの活用によって、製造現場や建設現場での遠隔監視が可能になるほか、故障・不具合を自動で検知することで、予知保全を実現できます。

日本国内企業のSAP BTPに関連する動き

日本国内では、主に2社で日本仕様にローカライズされたSAP BTPが活用されています。

  • 日本ソフトウェア株式会社
    SAP導入支援事業の強化を目的に、SAP BTPに特化した専門部署を設立しました。
    同社は、SAP BTPを利用したAIとの連携や、SAPシステムとの連携で日本企業の業務効率化をサポートしています。
  • 富士通株式会社
    これまで提供してきた環境構築やアプリケーションの実装事例などをより分かりやすくして日本企業へ提案しています。

SAP導入はグランパスコンサルティングにご相談ください

グランパスコンサルティングでは、SAP BTPを含めたアプリケーション開発からインフラ構築までをサポートいたします。
高水準のコンサルタント・エンジニアが、基幹・周辺システム等を含めた幅広い領域に対応するため、技術者が不足している現場での導入も実現できます。
また、システム部門だけでなく運用ベンダーも対象として、コンサルタント・エンジニアによるサポートが可能です。

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